肩が重い。夕方には靴がきつい。寝ても疲れが残る。けれど検査では異常なし。
こうした不調を、東洋医学は経絡(けいらく)の滞りとして捉えます。経絡マッサージは、その通り道に沿って手で刺激を与え、身体を巡る「気・血・水(津液)」の流れを整えるマッサージ方法です。この記事では、経絡と経穴の仕組みから、五臓のバランスで自分の状態を読み解くセルフチェックまでを紹介します。
経絡マッサージとは?
経絡マッサージの根本にあるのが東洋医学です。
経絡(けいらく)とは、全身を巡っている通路のことを言います。この経絡を「気・血・水(津液)」が循環しています。経絡マッサージとは、全身を巡るエネルギーの通り道である経絡やツボを刺激し、気・血・水(津液)の流れを整え、本来の美しさを引き出すマッサージです。
西洋医学が今出ている身体の不調の症状を取り除くことを目指すのに対し、東洋医学は病気になる前の段階で不調の芽を摘み、身体全体のバランスを戻す予防医学として発展してきました。痛みが出ている部位だけを診るのではなく、全身の状態を診てアプローチすることが特徴です。
肩が凝っている方の経絡の不調を診ていくと、原因が首だけではなく、背中や脇や脚に見つかることがあります。経絡マッサージが不調のある場所以外に触れるのは、この考え方に基づいています。
経絡と経穴について
経絡は、体を上下に流れる経脈と、網の目のように枝分かれする絡脈を総称したものです。そのほかに経別・経筋・絡脈・孫絡などがあり、ひとつの環となって全身の臓腑を巡りながら、気・血・水(津液)を循環させています。
経絡を線路にたとえるなら、その途中にある駅が経穴(けいけつ)=ツボです。
経穴を持つのは、正経十二経脈と、奇経八脈のうち任脈・督脈の二脈のみです。経穴は気の出入り口であり、体の表面と内側をつなぐポイントでもあります。
血管のように解剖で見える器官ではありませんが、臓腑に何らかの不調が現れると、経絡上の経穴にコリやへこみとして反応が出ます。逆に経絡の流れが滞ってしまうと、臓腑へ影響が及びます。体表は、身体の内側の状態を映す地図になっているのです。
12経脈は表裏一体で循環している


十二経脈はそれぞれルートが異なり、対応する経穴も臓腑も異なります。そして陰と陽に分かれ、表裏一体の関係で、途切れずに循環しています。①手の太陰肺経から⑫足の厥陰肝経へと流れ、⑫から再び①へ戻り、循環は続きます。
陰の経脈(太陰・少陰・厥陰)と、陽の経脈(陽明・太陽・少陽)が対になっています。
胃の調子を崩した方に、対になる脾経の経絡やツボで反応が出ることや、便秘が続く方の肺経の経絡やツボが硬さがあるなど実際の施術現場でも経絡をたどると、この表裏関係は身体の上に現れます。
不調の正体は「気・血・津液」の過不足
経絡の中を流れる三つの要素が、身体を構成する土台になります。
気は生命活動を動かすエネルギー。不足すれば力が入らず、倦怠感や食欲不振が出ます。気の流れが滞ると、イライラや冷えといった症状が現れます。
血は全身に栄養を運ぶ役割をしています。血が流れるには気の力が欠かせません。血が不足すると不眠や頭痛、流れが滞ると瘀血(おけつ)となり、肩こり、便秘、婦人科系の不調の原因と考えられています。
水(津液)は身体の水分の総称で、臓腑や皮膚を潤します。不足すれば乾燥やかゆみ、流れが滞れるとむくみやめまいへとつながります。
三つが過不足なく巡っている状態が、東洋医学の考える健康なのです。
陰陽五行が示す、感情と臓腑のつながり
東洋医学の原点にあるのが陰陽五行説です。あらゆるものを木・火・土・金・水の五つに分類し、互いを育てる「相生」、行き過ぎを抑える「相克」の関係で捉えます。人体では五臓(肝・心・脾・肺・腎)が対応します。
臓腑は感情ともつながっています。強い怒りは「肝」を消耗させ、深い悲しみは「肺」を弱らせます。 逆もまた然りで、肝が弱れば怒りっぽくなり、肺が弱れば悲しみが長引きます。
施術中に患者様から脇腹(肝経・胆経の経絡がある)の硬さがありました。後になって「あの時期、ずっと張りつめていた」と伺うこともあります。身体は感情によって変化することもあります。
あなたはどのタイプ? 五臓チェック
東洋医学では、心身の状態を「肝・心・脾・肺・腎」の五臓との関係から捉える考え方があります。
各項目は虚と実に分かれています。虚は気が不足している状態で、押すと気持ちよく、もっと押していたいと感じます。実は気が余って滞っている状態で、押すと痛みや強い響きが出ます。
最近の自分に当てはまるものを数えてみてください。
肝
虚タイプ
- 朝起きるのがつらく、身体に力が入りにくい
- 目が疲れやすい・視力の低下が気になる
- 身体が目覚めるまで時間がかかる
実タイプ
- イライラしたり、怒りっぽくなった
- 寝つきが悪い・眠れない
- 腰痛や寝返り・起き上がりのつらさがある
心
虚タイプ
- 驚きやすく、些細なことにもドキッとする
- 物事を悲観的に考えやすい
- 手足の冷えを感じる
実タイプ
- よく笑い、笑い声も大きい
- のどが渇き、冷たいものが欲しくなる
- 手のひらがほてりやすい
脾
虚タイプ
- 小さなことが気になり、不安になりやすい
- 疲れやすい
- 空腹時の胃痛や水っぽい下痢がある
実タイプ
- 便秘やお腹の張りが気になる
- 胃が弱いと感じる
- げっぷが出やすい
肺
虚タイプ
- 肌が乾燥し、血色が気になる
- 手足が冷えやすい
- 上半身が冷えて重だるく感じる
実タイプ
- 咳や息苦しさが出やすい
- のぼせや、のどの渇きを感じる
- 肩がこりやすい
腎
虚タイプ
- 疲れやすく、気力がわかない
- 足腰が弱くなったと感じる
- 顔色のくすみや立ちくらみが気になる
実タイプ
- 足の裏がほてったり、痛んだりする
- 気分がすぐれないことが多い
- 口や舌が渇き、のどがカラカラになる
チェックが多かった五臓は?
チェックが集中したところは、今の心身の状態を知るひとつのヒントになります。オススメのツボをゆっくり指の腹を使って呼吸に合わせて押してみましょう。
・肝にチェックが多かった方は、期門を押してみましょう。
期門 みぞおちの下から指3本分下の高さで、肋骨の際のあたり
・心にチェックが多かった方は、巨闕を押してみましょう。
巨闕 みぞおちとおへそのラインで、みぞおちから下の4分の1のところ。
・脾にチェックが多かった方は、章門を押してみましょう。
章門 一番下の肋骨の先端部分のすぐ下
・肺にチェックが多かった方は、中府を押してみましょう。
中府 鎖骨下部の一番外端から、指2本分下がったところにあるツボ
・腎にチェックが多かった方は、京門を押してみましょう。
京門 一番下の肋骨のすぐ下あたり
「最近イライラする」「疲れが抜けない」「胃腸の調子がいまひとつ」など、普段は別々に感じている身体の不調も、東洋医学の視点から見るとつながりが見えてきます。
まとめ
経絡マッサージは、滞りを解く手技であると同時に、滞らない身体を保つための予防のマッサージです。
気・血・水(津液)が巡っている身体は、疲れても翌朝には元気を取り戻します。不調が出てから対処する身体と、出る前に整える身体。その分かれ道が、日々の巡りへの意識にあります。
身体の内側から美しくなるということは、本来の健康で、しなやかな身体に近づく道筋になります。
いまの身体がどんな状態にあるのか、不調のご相談はオンラインカウンセリングでも対応しております。お気軽にご相談下さい。










